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アンコシャスバイアス~無意識の偏見が組織の未来を狭めていませんか?~

更新日:3月5日



【目次】

  1. はじめに:DEI推進とアンコンシャスバイアスの関係性

  2. アンコンシャスバイアスとは:その定義と種類

    • アンコシャスバイアスとは、人間の生存本能から生まれたもの

    • アンコシャスバイアスがもたらすもの

  3. アンコシャスバイアスが職場に与える影響:具体的な例

  4. アンコンシャスバイアスを克服するために:企業ができること

  5. まとめ:インクルーシブな組織文化の構築に向けて


1. はじめに:DEI推進とアンコンシャスバイアスの関係性


「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」は石破政権の地方創生施策の一つとして取り上げられるようになり、社会的に「アンコンシャス・バイアス」に対する注目度は高まっているのではないでしょうか。「アンコンシャス・バイアス」とは、自分自身は気づいていない「ものの見方やとらえ方のゆがみや偏り」をいい*、ゆがみや偏りがある物の見方を指します。

昨今では、アンコンシャス・バイアスによる性別役割分担について問題視されるようになりました。実際に企業組織においても、アンコンシャス・バイアスに関するトレーニングを実施する企業は増えてきました。

ハーバード・ビジネス・レビューの研究結果によると、複数の企業におけるDEI推進と業績向上の相関関係についての研究では、多様性に富む組織が革新的なアイデア創出や問題解決能力の向上につながる一方、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)がDEIの進展を阻む要因となっていることが明らかにされています。



2. アンコンシャスバイアスとは:その定義と種類


アンコンシャスバイアスとは、人間の生存本能から生まれたもの


アンコンシャス・バイアスの起源は、はるか昔、人間が原始時代に生きていた頃から存在していたと言われています。野原で狩猟をし、生きるエネルギーとなる動物を狩っていた頃、人間は鋭い牙や爪を持った生き物と胎児していました。当時の人類にとって、毎日の瞬時の意思決定は、生きるか、死ぬかの選択。

とある動物が狩りをしていたあなたに近づいてきたとしましょう。その動物をじっくり観察し、「がっしりしているか・いないか、爪が長いか、足が早そうか...」そう考えている内に、あなたはその獣に襲われ、生命を落としているでしょう。

判断に時間をかけていると、生命に関わる情報に陥ってしまう危険性があります。そのため人間の脳は、周りにある大量の情報を選別、優先付け、そして分類して要約することを無意識の中で処理できるように進化をしてきたのです。




実に脳が受け取る情報のうち、99% 以上は無意識のうちに処理される、という研究結果があります。しかし、すべてにおいて迅速な判断が正しいとは言い切れません。この脳が迅速に判断をしてしまう「認知のバイアス」は、過去の経験と学習に基づいた固定観念からできているもので、固定観念は5-7歳の間に大体が形成される、と言われています。その後、日常生活で目にするあらゆるもの、テレビやアニメ、広告、大人の会話、社会での状況、教科書、ありとあらゆるものが出来上がった固定観念の土台を強化学習的に作り上げていきます。



アンコンシャス・バイアスがもたらすもの


アンコンシャスバイアスとは、残念ながら、意識的な思考の外で自動的に働いてしまいます。ですから、本人が「自分は公平だ」と感じていても、実際には特定の属性(性別、年齢、人種、経歴など)に基づく偏った判断をしてしまうことがあります。

性別におけるアンコンシャス・バイアスについてご紹介します。


「周囲からの好感度に関する偏見」

男女が同じように「リーダーになりたい」というビジョンを持っていたとしましょう。

男性が「リーダーになりたい」と宣言をすれば、「頼り甲斐のある、頼もしい」というポジティブば印象をもたれることに対し、女性が同じくリーダーになるビジョンを持っていたとしても、それは「野心が見え見え、感じが悪い、アグレッシブだ」というネガティブな印象をもたれてしまう傾向にあります。


「母親は仕事に専念できないという偏見」

職場で、母親である応募者や従業員に対して、家庭との両立を懸念する偏見が働き、昇進や重要なプロジェクトへの参画が制限されるケースが報告されています。たとえば、ある大手企業では、女性管理職の昇進に際し、育児休暇取得後の復帰がネガティブな評価につながる事例が内部調査で浮上しています。また時間勤務を取得すると「やる気がない、モチベーションが低い」といったラベリングをされてしまうこともわかっています。


「評価に潜む偏見」

信じられない現象かもしれませんが、ミスをした際に「女性の方が責められることが多い」というデータがあります。また何か成し遂げた際に、男性の場合は本人の努力、性格といった内的要因に基づき仕事が評価されることが多いことにたいして、女性は周囲との関わり方や「周りが助けてくれた」「サポート体制が整っているから」という理由で低く評価をされてしまうアンコンシャス・バイアス(帰属バイアス)が存在します。



3. アンコンシャスバイアスが職場に与える影響:具体的な事例


アンコンシャス・バイアスは、職場に悪影響をもたらします。アンコンシャス・バイアスは、ジェンダーだけではなく、世代・学歴・社歴・経験に基づいて現れます。例えば、若い人の意見は尊重されない、もしくは高齢者は新しい領域を学習できない・意欲がないとみなす年齢のバイアスも存在します。こうしたアンコンシャス・バイアスは、見ず知らずの間に多様な人が活躍できるチャンスを奪う可能性があります。


また、バイアスが影響して、特定の属性の従業員が孤立感を感じる場合、従業員満足度やエンゲージメントが低下するという調査結果もあります。たとえば、某多国籍企業の内部調査では、マイノリティグループに属する従業員の離職率が、組織内での公平な評価がなされないことと相関していることが示されました。アンコンシャス・バイアスは、多様な人材の活躍機会を阻害するだけでなく、結果として、離職率の高まり、ひいては企業ブランドを毀損する可能性すらあるのです。


実際のアンコンシャス・バイアス事例


履歴書の匿名化実験事例について紹介します。米国の研究(Bertrand & Mullainathan, 2004)では、同一の履歴書に男性的な名前と女性的な名前を付けて応募した場合、男性名義の応募書類の方が面接に呼ばれる確率が高いことが確認されています。

こうした無意識の偏見が採用プロセスに入り込ませないようにするために、構造的に防ぐ対策を講じる必要があります。この採用の男女候補者を無意識に排除しないため、履歴書に名前を書かない、履歴書の写真添付を求めない、などの対策が考えられます。欧米では、履歴書や職務経歴書に写真の添付を禁止する企業も多く存在します。




4. アンコンシャスバイアスを克服するために:企業ができること


アンコンシャス・バイアスと戦うために、私たちはどうしたらいいのでしょうか?

まずは「無意識の偏見」の存在を広く知ってもらう・そして定期的に対話をする機会を持つことが非常に重要です。

実際にアンコンシャスバイアス研修を全社員に義務づけているGoogleでは、研修後の意識調査では、参加者の約70%が自分の無意識の偏見に気づき、日常の業務で意識的にバイアスを排除する行動を取るようになったと報告されています。

アンコンシャス・バイアスについて気付き、対話できる場ができたら、アンコンシャス・バイアスが仕組み上入り込まない様な制度設計に改善することが有効でしょう。

これは有名なオーケストラの採用事例の一つです。「ブラインド・オーディション」というもので、クラシック音楽界では、1980年代以降、オーケストラの採用プロセスにおいて、演奏者をカーテンで仕切り、演奏だけを評価する「ブラインド・オーディション」が導入されました。この取り組みにより、女性奏者の採用率が大幅に向上し、結果的に男女比の改善と演奏の質向上が実現したとされています。*Goldin & Rouse (2000)「Orchestrating Impartiality: The Impact of 'Blind' Auditions on Female Musicians」




またメンター制度・スポンサー制度を積極活用することも重要です。アクセンチュアのメンター制度は、多様な背景を持つ若手社員が、シニアリーダーとのメンタリングプログラムを通じてキャリアアップを図る取り組みを実施。これにより、従来のバイアスに左右されずに実力が評価される環境が整備され、昇進機会の平等化に寄与しています。



5. まとめ:インクルーシブな組織文化の構築に向けて



アンコンシャス・バイアスは、個人の意思決定や組織の文化に無意識のうちに影響を及ぼす要因です。これを克服するためには、全社員が意識を高める研修を実施したり、バイアスを排除する仕組みの構築が不可欠です。企業が積極的に取り組むことで、多様な人材が活躍しやすい環境を実現し、ひいては組織の成長につながるでしょう。株式会社ソルビスでは、無意識の偏見に関するワークショップも提供可能です。ぜひご相談ください📝


 

参考:

 

(著:宮本佳歩)


 
 

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