DE&I取り組み事例:メルカリのDE&I成功事例、ポイント含めて紹介
- yukatamamura
- 3月26日
- 読了時間: 9分
更新日:9月4日

メルカリグループは、2023年に「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というSustainabilityの新しいミッションを発表しました。
メルカリグループの事業を通して、物理的なモノやお金に限らずあらゆる価値を循環させることで、誰もがやりたいことを実現し、人や社会に貢献できるようにし、あらゆる人の可能性を広げていきたいという想いで活動されているようです。
そんなDE&I先進企業であるメルカリのDE&I成功事例、ポイント含めて紹介をご紹介いたします。
【目次】
人・組織のパフォーマンスを最大化するための仕組み、制度作り
CEO直轄の社内委員会「D&I Council」を設立
個人と組織のパフォーマンスおよびバリューがもっとも発揮しやすいワークスタイルを自ら選択できる制度導入
キャリア開発プログラムの実施
育児・介護等でキャリアを中断した方を対象としたキャリア再開支援プログラム
ITマイノリティを対象とするソフトウェアエンジニア育成プログラム
海外現地での採用活動、約50%が外国籍の社員
DE&I取り組みによる格差の是正とエンゲージメント向上
さいごに:経営戦略の1つとして、DE&Iの推進を
人・組織のパフォーマンスを最大化するための仕組み、制度作り
CEO直轄の社内委員会「D&I Council」を設立
2018年から社員有志による活動として開始したD&I活動でしたが、2019年より人事関連部門を中心とした正式な組織として発足し、2021年にはダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)をさらに推進するための社内委員会「D&I Council」を2021年に設立しています。チェアパーソンとしてメルカリ代表取締役CEO 山田進太郎氏を迎え、代表直轄の委員会となりました。
D&I Councilの主な役割は、以下のように定められています。
D&I Roadmapの作成を通じた中長期的な目標の設定
ビジネス・組織成長・人材育成のニーズに基づく全社D&I施策の優先順位の協議
各組織のD&Iに関連する課題の吸い上げとD&I施策の推進
経営陣のD&Iに関連する個人目標のモニタリングと評価
【💡実現のポイント】
①トップマネジメントのコミットメント
D&I評議会の議長に代表取締役CEO・山田進太郎氏が就任し、「代表直任」の委員会としたことで、D&Iが経営の重要なアジェンダ示しました。代表から社内外に強く示したことで、各部門・社員が「本気の取り組み」と認識しやすい状態を作りました。
②ロードマップによる中長期視点の設計
D&Iロードマップを策定し、単発的な問題ではなく、中長期的な目標を慎重に検討することが重要です。「今すべきこと」と「将来的に目指す姿」を明確にすることで、ブレない推進が可能となります。
③全社横断型の優先順位設定と連携
ビジネスや組織、人材育成の観点から、全社視点で優先度を議論・設定している点もポイントです。D&I問題が人事や有志だけのものにならず、事業成長と一体化しているため、現場にも「自分ごと化」しやすい状況を作っています。
個人と組織のパフォーマンスおよびバリューがもっとも発揮しやすいワークスタイルを自ら選択できる制度導入
メルカリでは、個人と組織がパフォーマンスおよびバリューを最大限に発揮できるよう、働く場所や時間を限定せず、柔軟で多様な働き方を実現しています。
“働く場所”を選択できる
オフィス出社も、出社を前提としないフルリモートワークも、個人の判断で選択可能
セキュリティが確保されていれば、自宅・宿泊施設等で働くことも可能(メルカリが定める「セキュリティガイドライン」に従い、リモートワークの実施が可能)
”住む場所”を選択できる
日本国内であれば、居住地は不問
通勤手段として、飛行機、新幹線、特急列車、高速バス、フェリーなど、全ての公共交通機関が利用可能(通勤手当を月額15万円まで支給)
“働く時間”を選択できる
フルフレックス(コアタイムなし・フレキシブルタイムなし)で、24時間365日フレキシブルに勤務可能
日中の中抜けや1日の労働時間を増やして週休3日などにすることも可能
【💡実現のポイント】
①Trust & Opennessなカルチャー
信頼を前提としたオープンなカルチャーのもとに成り立っている制度です。できる限りルールでは縛らず、多様なメンバーが迷うことなく判断できるような最低限のガイドラインやメカニズムにとどめています。
②オープンなコミュニケーション
風通しが良くオープンな風土を維持するため、やり取りは基本的にSlackのオープンチャンネルで行っています。
③チームビルディングの費用補助制度
コミュニケーションが希薄にならないよう、縦横斜めの連携や親睦を深めることを目的としたチームビルディングを推奨しており、それに伴う飲食代を会社が補助しています(オンライン・オフライン不問/上限金額あり)。
④Work Style Sync
メルカリでは、「生産性が上がる時間帯」や「好ましい出社頻度」などを各チーム単位で設定することで、それぞれが理想とするワークスタイルの実現を行っています。
キャリア開発プログラムの実施
育児・介護等でキャリアを中断した方を対象としたキャリア再開支援プログラム
メルカリでは、2021年に育児・介護等でキャリアを中断した方を対象としたキャリア再開支援プログラム”Mercari Restart Program”を開始しています。
様々な事情でキャリアを一度離れた方を対象に、3ヶ月程度の有給の就業型インターンシップを提供し、職場への復帰を支援するプログラムです。
出産・育児、介護、家族の転勤などの理由によって、一度労働市場を離れてしまうと、職場復帰や再就職が難しく、企業においても本来発揮すべきスキルがある人材を活用できていないという課題があります。
メルカリでは、様々な事情でキャリアを一度離れてしまった人材に対しても活躍の機会を提供し、職場への復帰を支援すべく、”Mercari Restart Program”を実施しています。
ITマイノリティを対象とするソフトウェアエンジニア育成プログラム
女性やLGBT+コミュニティの方などIT業界のマイノリティ(少数派)を対象とした、ソフトウェアエンジニア育成プログラム「Build@Mercari 2022」を実施しています。
育成プログラムの内容は、以下の2ステップで実施されています。
データ構造とアルゴリズム、メルカリで使用している技術領域を学び、必要な技術力を身に着けるためのオンラインビデオコースの受講。(その後インターンシップ選考あり)
メルカリグループの開発チームで2ヶ月間、各チームが担当するアプリやウェブ機能の開発に携わる。(給与あり)
【💡実施ポイント】
マイノリティやキャリアブレイクのある人材を、リスキリング含めて積極的に雇用する
キャリアブレイクの無い人材であってもリスキリングが必須な時代でもあります。このような「働くことへの慣れとリスキリング」を前提とした採用活動は、人手不足と言われる昨今において、DE&Iの取り組みを通じて上手く人材確保を行っている事例です。
海外現地での採用活動、約50%が外国籍の社員
エンジニア採用は新卒/中途で約10カ国で現地採用活動実績があります。
【海外現地採用の主な取り組み】
海外現地でMeet-Up(説明会と懇親会)の実施
Tech Conferenceでのブース出展/講演など
新卒については大学での説明会や現地での面接の実施(オンライン説明会なども実施)
【海外採用の採用手法】
Job Board:代表的なLinkedinを中心に、リロケーションを希望するEngineer向けのGlobalなJob Boardに求人を掲載。Linkedinでは定期的に自社コンテンツを英語で配信。
Scout:Linkedinを中心に、世界中のTalentにアプローチし、一人ひとり面談等で会社の説明及びカジュアル面談を実施し採用につなげる。スカウト専任リクルーターも配置。Referral:Referralしてくれた社員には報奨金を支給。また、採用会食の費用などは全額会社が負担し、知人に声がけしやすい環境を整備。
Campus採用:海外の大学に訪問し、会社説明および現地にて選考などを実施(採用ベンダー利用)。昨年12月のインドIIT採用ではメルカリ単独で約3000名の応募あり。
DE&Iの観点のみでなく、国内でエンジニアの採用が困難な中で、海外の現地採用に力を入れることはとても有効だと思われます。
一方で、海外採用が進むと、外国籍社員の言語や生活面の問題なども発生するため、採用して終わりではなく、その後のリロケーションサポートなども実施していく必要があります。

DE&I取り組みによる格差の是正とエンゲージメント向上
DE&Iの取り組みを通して、メルカリではジェンダー格差の是正や多様性の取り組みに成功しています。
【人的資本に関する情報(2024年6月期)】
女性の割合
全社員:32.2%
管理職:23.7%
取締役:58.0%
男女間賃金における「説明できない格差」:2.3%
男性の育児休業
取得割合:87.4%
取得平均日数:95.7日
【従業員のロイヤルティ】
組織の健康診断としてeNPSを測定し、各カンパニー・部門の社員のエンゲージメントを測定しています。
『あなたは現在の職場を親しい友人や家族にどの程度お勧めしたいと思いますか?』という質問に0~10の段階で推奨度を従業員が回答。0~6が批判者、7と8が中立者、9と10が推奨者で、『推薦者の比率-批判者の比率=eNPSの数値』となります。メルカリのeNPSの数値は右肩上がりとなっています。
また、エンゲージメントサーベイを用いて「エンゲージメントが向上している」と満足しておわりではなく、その後のアクションにつなげることを意識されています。
社員から見て半径5m以内に何らかの変化を起こせるよう、行動における組織の単位をどんどん狭めていき、現場マネージャーがオーナーシップをもってアクションをするように促しているようです。
さいごに:経営戦略の1つとして、DE&Iの推進を
メルカリの取り組みからは、単純な福利厚生や一過性のイベントではなく、DE&Iの推進が経営戦略の一つとしてしっかり根付いていることがわかります。
さらに、追加労働力人口が減少し、多様な人材の活躍が企業の競争力を決める時代が訪れます。DE&Iはどの企業にとっても避けて通れないテーマです。
メルカリの事例をヒントに、皆さんの組織でも「誰もが自分らしく働ける環境づくり」に向けて、できる一歩から真剣に考えませんか?
(参考)
プレスリリース:メルカリ、社員個々の多様な経験や視点を尊重した、世界的に競争力のあるチームづくりを目指し、CEO直轄の社内委員会「D&I Council」を設立https://about.mercari.com/press/news/articles/20210119_dandicouncil/
プレスリリース:メルカリ、育児・介護等でキャリアを中断した方を対象としたキャリア再開支援プログラム 「Mercari Restart Program」の募集を開始https://about.mercari.com/press/news/articles/20211125_mercarirestartprogram/
プレスリリース:メルカリ、IT業界のマイノリティを対象としたソフトウェアエンジニア育成プログラム「Build@Mercari 2022」の 募集を開始 https://about.mercari.com/press/news/articles/20220301_buildatmercari2022/
海外採用・定着に向けたI&Dの取組みについて https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/highly_skilled_foreign/pdf/003_06_00.pdf
HRカンファレンス:メルカリの事例を通じて考える、これからの「組織開発」 https://jinjibu.jp/hr-conference/report/r202205/report.php?sid=2749
(著:玉村 優佳)



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