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【完全ガイド】女性を惹きつける採用広報とは― DE&I推進を基盤にした採用ブランディング戦略 ―


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採用広報が「企業の姿勢」を映す時代へ


いま、採用活動の主戦場は「リクルーティングサイト」や「リクルーティングイベント」ではなく「企業の発信」に移りつつあります。 とくに女性人材の採用では、“どんな会社で働くのか”よりも、“どんな価値観をもった会社と共に生きていけるのか”が重要視されるようになっています。


かつては「女性活躍推進」という言葉がキャッチコピーのように使われていましたが、求職者の目は確実に肥えてきています。


 表面的なジェンダー施策ではなく、本質的に多様性・公正性・インクルージョン(DE&I)を体現している企業かどうかが見られる時代です。


どうすれば女性を惹きつける採用広報を実現できるのでしょうか。企業がDE&Iの施策を実施していることを前提に、採用広報の視点でDE&Iの要点を整理し、業界別の課題や成功のポイントまでを掘り下げていきます。


【目次】

1. 女性採用の本質は「多様なロールモデルの提示」にある

2. 「制度」ではなく「文化」を伝える採用広報へ

3. 採用広報の“DE&Iチェックリスト”

4. 業界別の特徴と課題

(1)IT・テクノロジー業界

(2)メーカー・製造業

(3)金融・コンサルティング業界

(4)サービス・小売・接客業

(5)スタートアップ・ベンチャー

5. 採用広報における「言葉のアップデート」

6. 「採用広報 × DE&I」の実践フレーム

7. 成功事例に見る「文化を伝える採用広報」

8. 採用広報は“企業のDE&Iメッセージ”そのもの

おわりに

ジェンダーに関係なく、採用広報に必要なのは戦略とHow to をしっかりと定めることです。候補者のペルソナ設定、ペルソナの悩みや自社で働くことで描けるキャリアパスをしっかり言語化し、また自社の訴求したい魅力を高いレベルで表現できている必要があります。採用広報の本質は、自社で働くことに共感を得て、ファンになってもらい、そして最終的に最適な候補者を採用し迎え入れることです。こうした採用広報の基礎ができている前提で、女性の採用に特化した採用広報で気をつけたいことを深掘りしていきます。


1. 女性採用の本質は「多様なロールモデルの提示」にある


採用広報で女性を惹きつける最大の鍵は、”自分の働く未来を想像できるかどうか”です。

求人票や福利厚生よりも、実際に働く人の姿が見えるかどうか。「この会社には、自分のような価値観やライフステージの人が活躍している」という共感が、応募意欲を大きく左右します。


たとえば、

  • 子育てとキャリアを両立している社員

  • キャリアチェンジや地方移住を経て働く社員

  • 管理職や専門職として活躍する女性リーダーなどのストーリーを発信することは、単なる広報ではなく、“多様性の可視化”そのものです。


こうした発信を考えるときに、よくある落とし穴があります。それは「女性活躍」を“ひとつの理想像”に押し込めてしまうこと。華やかな経歴のある人だけを採用広報の表舞台に経ってもらう、や同じようなライフステージにいる方だけを取り上げる場合、「多様なロールモデル」の提示から遠くなり、「同じような属性の方しかいないのかな」と逆に懸念をもたれる可能性すらあります。


DE&Iの視点で大切なのは、“働く女性の理想のキャリア像”を一つの型にはめないことです。つまり、光の当たる面だけでなく、そこに至るまでの悩みや葛藤も含めて“人としてのリアル”を見せること。それが結果的に、多様な女性に「ここで働く自分を想像できる」感覚をもたらします。


たとえばこんな視点を意識してみてください。


  • 「成功例」だけでなく、「迷い」や「転機」を語るストーリーをつくる

  • 「女性だから」ではなく、「その人らしさ」を軸に描く

  • 仕事だけでなく、生活・価値観・人との関わりも含めて紹介する

  • 一人の語りを“特別なケース”にせず、「社内でよくある日常」として伝える


採用広報で重要なのは、“見せ方”ではなく“伝え方”。

企業が多様な個人の声をどれだけ丁寧にすくい上げているか。

その姿勢こそが、DE&Iの実践であり、女性の候補者を惹きつける最大の力になります。



2. 「制度」ではなく「文化」を伝える採用広報へ


多くの企業が育休・時短勤務・リモート制度を整備しています。しかし、女性が注目しているのは制度そのものではなく、制度が「実際に使える文化かどうか」です。


たとえば、

  • 「男性の育休取得率が高い」=性別に関係なくケア責任を分担できる文化がある

  • 「短時間勤務の社員が昇進している」=成果の評価が柔軟である

  • 「管理職の多様性が高い」=意思決定の場に多様な視点がある


このような情報は、求人票や企業サイトの制度一覧よりも、“社員の声や事例紹介”の中でこそリアルに伝わります。採用広報は「制度紹介」から「カルチャー紹介」へ。ここにDE&I推進の鍵があります。



3. 採用広報の“DE&Iチェックリスト”


女性を惹きつける採用広報がDE&Iの観点から十分かどうかを確認するには、以下の観点をチェックしてみてください。

観点

質問例

チェック内容

ダイバーシティ

表現されている社員は多様か?

年齢、職種、ライフステージ、出身地などのバランス

エクイティ(公正性)

成長や評価の機会が公平に見えるか?

女性リーダーの登場頻度やキャリア支援制度

インクルージョン

「居場所」や「つながり」が伝わるか?

社内コミュニティやメンター制度の紹介

無意識バイアス

固定観念的な表現を使っていないか?

「女性らしい」「やさしい雰囲気」などの言葉の点検

心理的安全性

意見や挑戦を歓迎する風土が見えるか?

チームの対話文化やフィードバック体制


4. 業界別の特徴と課題


それぞれの業界や職種での採用広報における、課題・傾向、そして改善ポイントについて紹介します。上記で紹介した「共通する課題」以外の着目点を中心に紹介します。


(1)IT・テクノロジー業界

課題: 女性エンジニア比率が依然として低い。

傾向: そもそも女性エンジニアが少ないため、採用広報に登場するロールモデルにジェンダーの偏りがある。同一の女性のエンジニアが繰り返し登場し、ロールモデルの多様性を提示することが困難である。

改善ポイント:

  • 「技術×生活」「技術×社会貢献」といった多様な文脈で働く姿を紹介

  • エンジニアリング以外の価値(ユーザー理解・共創など)を重視する文化を伝える


(2)メーカー・製造業

課題: 生産現場や研究開発職での女性比率が低い。

傾向: “モノづくり精神”を前面に出すが、職場環境やライフサポートへの言及が少ない。

改善ポイント:

  • 工場勤務女性のリアルな一日を可視化する

  • 現場設備・安全・制服・トイレなど「職場環境のアップデート」を発信

  • 男性上司の協働エピソードを通じて「文化の変化」を伝える


(3)金融・コンサルティング業界

課題: 管理職登用率・長時間労働・転勤文化の課題が根強い。

傾向: “プロフェッショナル”や“成果主義”を訴求しがち。

改善ポイント:

  • 柔軟なキャリアパスを提示する

  • 「チームで成果を上げる文化」への転換を発信

  • 意思決定層に女性がいることを明示(経営層・マネジャーの紹介)


(4)サービス・小売・接客業

課題: 女性比率は高いが、マネジメント層にジェンダーの偏りあり。。

傾向: “明るく元気”“おもてなし”など、性別役割バイアスの強い表現が多い。

改善ポイント:

  • 「現場の声」だけでなく「企画・開発・管理職の女性」も紹介

  • 女性がキャリアアップできる教育・評価制度を明示

  • 感情労働のケアを可視化


(5)スタートアップ・ベンチャー

課題: スピード重視の文化が“男性的価値観”になりやすい。

傾向: 「挑戦」「結果」「変化」を強調し、安心感が伝わりにくい。

改善ポイント:

  • 「失敗しても成長できる風土」や「支え合うチーム文化」を見せる

  • 育児・介護・副業など、柔軟な働き方を制度ではなく実例をもって紹介

  • 男女問わず「心理的安全性」を感じられる採用コンテンツを設計



5. 採用広報における「言葉のアップデート」


DE&I推進の観点では、採用広報で使う言葉も重要です。

たとえば次のような表現は、無意識のうちに求職者を限定してしまう場合があります。

旧来の表現

改善例

「女性が活躍できる職場」

「多様なライフステージの人が働ける職場」

「ママ社員も多数在籍」

「育児と仕事を両立する社員も活躍」

「バリバリ働きたい方歓迎」

「自分のペースで挑戦したい方も歓迎」

「体育会系のノリ」

「フラットに意見を交わせる文化」

言葉の選び方ひとつで、応募のハードルも印象も大きく変わります。

採用広報は、無意識のバイアスを映す鏡でもあります。



6. 「採用広報 × DE&I」の実践フレーム


実際に企業が取り組む際は、次の5ステップを意識すると整理しやすくなります。


  1. 現状の採用広報を棚卸し 

    → 採用サイト・求人票・SNSなど採用チャネルを棚卸しし、設定したペルソナに訴求できるコンテンツが網羅できるのかを可視化

  2. バイアスチェック 

    → 言葉・写真・ロールモデルの偏りを確認

  3. ペルソナ設計 

    → 惹きつけたい女性層(新卒・中途・再就職など)を明確化

  4. 発信チャネルの最適化 

    → SNS、note、YouTube、イベント、インタビューなど多層的に設計

  5. 定量×定性の効果測定

    → 応募数・滞在時間・共感コメント・内定辞退理由などで評価



7. 成功事例に見る「文化を伝える採用広報」


採用広報の成功とは、単に応募数を増やすことではありません。その企業の「価値観」や「文化」に共感してくれる人と出会えるかどうかが重要になります。この視点こそ、DE&I時代の採用広報における本質です。ここでは、文化を言葉や仕組みで伝えることに成功した3社の事例を見てみましょう。


IT企業:サイボウズ株式会社

“100人いれば100通りの働き方”を体現し、柔軟性を文化として発信


サイボウズは、かねてから「多様な働き方の実現」を掲げ、社員一人ひとりの事情や希望に合わせて働ける環境を整えています。採用広報では、制度紹介にとどまらず、「在宅勤務」「副業」「時短」「転居勤務」など、実際に働く人々のストーリーを軸にしたコンテンツを発信。採用サイトやYouTubeチャンネル、noteなどで社員のリアルな声を紹介することで、企業理念である「チームワークあふれる社会をつくる」を“制度ではなく文化として”可視化しています。


特に印象的なのは、固定観念にとらわれない姿勢です。 たとえば「育児と仕事の両立」「休職からの復帰」「転職から再入社」など、キャリアの途切れを“マイナス”ではなく“人の選択”として受け入れる。その姿勢が、女性だけでなく、多様なバックグラウンドを持つ人々からの共感を集めています。


結果として、サイボウズは採用広報を通じて「DE&I企業」というブランドを確立しており、応募者の約7割が、エントリー理由として「企業文化への共感」を挙げています。


メーカー:三陽工業株式会社

制服リニューアルを通じて“現場で働く誇り”を再設計した製造業の挑戦


製造業は「男性の仕事」という固定観念が他の業界と比べて強く残る業界ではありますが、三陽工業はその壁を打ち破り、「現場で働く女性が、もっと誇りを持てるデザインを」という声をきっかけに、女性社員が中心となって新制服の企画・開発を主導しました。従来の無骨な作業着ではなく、機能性とデザイン性を両立したスタイリッシュなユニフォームを完成させました。


この取り組みを同社は採用広報に展開し、新制服のビジュアル撮影に女性社員自身が登場し、SNSやプレスリリースで発信したところ、若年層からの応募が急増しました。また、社内でも「自分たちの声が形になる」ことへの誇りが生まれ、エンゲージメント向上にもつながったといいます。


三陽工業の事例は、DE&Iを“理念”ではなく“日常の選択”として体現する好例です。

“現場を変えるには、まず現場の人の声を聴く”

この姿勢が、採用ブランディングにも自然に反映されています。


コンサルティング業界:フューチャー株式会社

男性育休のリアルな声を発信し、組織文化の信頼を育てた


フューチャーは、男性育休取得率66.7%という実績を持つコンサルティング企業です。制度を整えるだけでなく、「使える空気」をつくることに注力している点が特徴的です。同社のnoteでは、育休を取得した男性社員のインタビューや、取得を支えた上司・同僚のコメントが多数掲載されています。


「仕事を離れる不安」「戻ったときの業務調整」「子育てで得た新しい視点」、こうしたリアルな声を社外にもオープンにすることで、“育休は特別なものではない”という文化を社内外に示しました。


結果、採用面接では「この会社は本当に人を大事にしている」「自分のライフステージも大切にできそう」という声が増え、応募者の定着率と社内信頼の両立を実現しています。



8. 採用広報は“企業のDE&Iメッセージ”そのもの


採用広報は単なる採用手段ではなく、「企業がどんな社会を目指しているか」を発信する場です。女性候補者を惹きつけるということは、同時に「多様な人が活躍できる土壌を示す」ことに他なりません。

採用広報が変われば、応募者が変わり、組織が変わります。それは、企業の未来を変える最初の一歩でもあります。


おわりに


女性候補者を惹きつける採用広報とは、「女性を優遇する」ことではなく、「多様な生き方を尊重する社会づくりの仲間を募集すること」です。

企業がその姿勢を発信できたとき、 “採用広報”は単なる手段ではなく、社会を変えるメッセージにもなることでしょう。


参考情報・出典一覧


● サイボウズ株式会社(Cybozu)

● 三陽工業株式会社(Sanyou Kogyo)

● フューチャー株式会社(Future)


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