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「公平性(Equity)」では足りない?平等性との違いとユニバーサルデザインの考え方

  • 8 時間前
  • 読了時間: 8分

2026年5月24日 作成


白地に水色枠のスライドで、「公平性(Equity)では足りない?」と大きく表示。平等と公平の違い、ユニバーサルデザインの考え方、sorubisロゴがある。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)における「Equity(公平性)」は、誰もが同じスタートラインに立ち、同じように成功できるよう、それぞれのニーズや状況に合わせて異なるサポートやリソースを提供するという考え方です。


本記事では、「Equity(公平性)」と「Equality(平等)」との違い、またとても重要であるにもかかわらずあまり注目されていない「ユニバーサルデザイン」について解説し、より良い組織の在り方について考察します。


【目次】

  1. 「平等(Equality)」と「公平(Equity)」の違い

  2. あまり意識されないけど、本質的な”ユニバーサルデザイン”という考え方

    • 「平等」「公平」そして「ユニバーサル」の違い

    • Reality(現実・配慮なし)の状態は、実は平らな地面ではない

    • 配慮のない組織はどうなるのか?

  3. なぜ今、ユニバーサルの視点が必要なのか

    • 組織におけるユニバーサルデザインの具体例

    • 個別対応には限界がある

  4. 最後に:女性や障害者だけが特別ではない。「誰もが」が働きやすい組織を目指して


1. 「平等(Equality)」と「公平(Equity)」の違い


「平等(Equality)」と「公平(Equity)」は言葉は似ていますが、実はアプローチが根本的に違います。


  • 平等性(Equality):全員に「全く同じもの(リソースや機会)」を均等に与えること。一見フェアに見えますが、スタート地点や個人の状況(障がい、言語の壁、育児環境など)が考慮されていないため、結果に格差が残ってしまいます。

  • 公平性(Equity): 全員が「同じゴール(活躍できる状態)」に到達できるよう、それぞれの状況に合わせた「異なる必要なサポート」を与えること。


よく使われる有名な比喩で、背の高さが違う3人が高い塀の向こうにある野球の試合を見ようとしているシチュエーションが用いられます。


平等性は全員に「同じ高さの踏み台」を1つずつ配り、背の高い人はさらによく見えますが背の低い人は相変わらず野球の試合を見られない状態であるのに対し、公平性では、背の低い人には「2つの踏み台」を配り、背の高い人には「踏み台なし」に個別最適化することで全員が同じように試合を楽しめるようにする考え方です。


このような話から、誰もが働きやすい組織を作りDE&Iを推進するためには、公平な対応こそ重要に見えるでしょう。

それも間違いではありませんが、本当は、そもそも野球の試合を見えなくする壁があることが大きな障害である、とは思いませんか…?


2. あまり意識されないけど、本質的な”ユニバーサルデザイン”という考え方


ユニバーサルデザインという言葉を聞いたことがあるでしょうか?


ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、障がいの有無などに関わらず「最初から誰もが利用しやすいようデザインする」ことです。最初から使いやすさを前提として仕組みやサービスを設計する考え方です。


このユニバーサルデザインが、組織の多様性を考える上でとても重要となってくるにも関わらず、あまり知られていない印象があります。


✔「平等」「公平」そして「ユニバーサル」の違い


先ほどと同じ比喩で、野球観戦のシチュエーションを考えてみましょう。


JUSTICEと記載されている部分がユニバーサルデザインです。Universal(ユニバーサル)では、 そもそも遮る「不透明な壁」をなくし全員が見通せる状態になっています。結果、 誰も踏み台(特別な配慮やサポート)を必要とせず、最初から全員がそのままの状態で楽しむことができます。


✔ Reality(現実・配慮なし)の状態は、実は平らな地面ではない


実際には、平等性も公平性もユニバーサルデザインも考慮されない「REALITY(現実)」では、実は平らな地面の上でそれぞれの格差が生じるのではありません。このイラストのように、「現在の社会は単にスタートラインが不平等なだけでなく、持てる者がさらに多くの資源や支援を得て、持たざる者がさらに過酷な状況に追いやられている」という厳しい実態である場合が多く存在します。


  • スタートラインの圧倒的な格差 イラストでは、一人の観客(特権を持つ側)は自分が周りより高い視界の位置におり、視界を遮るものがありません。(フェンスは障害にはならない)さらに、「REALITY」の状況では、すでに良く見えている側の観客の下に、さらに高い台(たくさんの踏み台やサポート)が与えられています。


  • 片や全く見えない不条理

    一方で、もう一人の観客(過小評価されたり、社会的に排除されたりしている側)は、視界を遮る非常に高いフェンスの前に立たされています。それだけでなく、フェンスの高さが変わらないにもかかわらず、地面よりもさらに低い穴のような場所に立たされているか、踏み台すら与えられていません。


「現実(Reality)」では、「必要性の高い人が最も少なく受け取り、最も必要性の低い(すでに持っている)人が最も多く受け取っている」という、逆転した不平等が起きている状態を指しています。


私たちは「平等」や「公平」を議論する前に、まずこの「歪んだ現実(Reality)」を直視し、認識する必要があります。


✔ 配慮のない組織はどうなるのか?


組織において「配慮無し」とは、「これまでのマジョリティ(多数派)にとって都合の良いルールが、そのまま放置されている状態」を指します。


  • オフィスの環境:健康で五体満足な人を前提に設計されている。段差が多く、車椅子の人が一人で移動できない。

  • 働き方:「残業ができること」「いつでも出社できること」が評価の前提になっている。育児や介護、持病などの事情がある人は、どれだけ能力があっても「やる気がない」「コミットしていない」とみなされ、キャリアから脱落してしまう。

  • コミュニケーション:「言わなくても分かる(阿吽の呼吸)」や「飲みニケーション」が重視される。中途入社の人、外国籍の人、育児中で夜の付き合いができない人が情報から孤立する。


恵まれた環境にいる人は、自分が「環境のおかげで成果を出せている」ことに気づかず、「成果が出ないのは本人の努力不足だ」と誤解してしまいます。


一方で、障壁に阻まれている人は、実力を発揮するチャンスすら与えられないため、組織としては「優秀な人材を自ら潰し、多様な視点を失う」という大きな損失を被ることになるでしょう。


3. なぜ今、ユニバーサルの視点が必要なのか


✔ 組織におけるユニバーサルデザインの具体例


Equityが「困っている人への個別対応」であるのに対し、Universalは「最初から誰も困らないように、ルールや環境そのものをデザインし直す」アプローチです。ビジネスや組織における「ユニバーサル(Universal)」は、例えば以下のような違いが考えられます。

アプローチ

Equity(公平性)の対応

Universal(ユニバーサル)の対応

オフィスの環境

車椅子の社員が入社したので、その人の動線にスロープを設置する。

最初からすべての段差をなくし、自動ドアや多目的トイレを標準装備にする(誰でも使いやすい)。

情報共有

視覚・聴覚障がいのある社員のために、個別に資料の読み上げソフトや手話通訳を手配する。

全社で使うツールを最初からアクセシビリティ対応(字幕自動生成、音声読み上げ対応)のものにする。

勤務制度

育児・介護中の社員向けに、特別な「時短勤務枠」や「在宅勤務許可」を申請ベースで付与する。

全社員を対象に「フルフレックス・完全リモートワーク可」を基本制度とし、誰でも自由に選べるようにする。


✔ 個別対応には限界がある


Equity(公平性)は非常に重要ですが、個別対応には「申請する側の心理的ハードル」や「運用のコスト」が発生します。また、「あの人だけ優遇されている」といった周囲の誤解(逆差別感)を生むリスクもゼロではありません。


一方で、仕組みそのものをユニバーサルに変えると、以下のようなメリットが生まれます。


  1. 全員が恩恵を受ける: 例えば、段差をなくすことは、車椅子の方だけでなく、ベビーカーを押す人、重い荷物を運ぶ人、怪我をしている人、すべての人にとって快適になります。

  2. 心理的安全性が高まる: 「自分だけ特別な配慮を受けている」という引け目を感じる必要がなくなります。


DE&Iの最終ゴールは、Equityを重ねた先にある「特別な配慮すら必要としない、誰もが最初から自然に活躍できるユニバーサルな組織(社会)」だと言えるでしょう。


4. 最後に:女性や障害者だけが特別ではない。「誰もが」が働きやすい組織を目指して


現在、女性活躍推進によって女性従業員の採用や管理職の登用、さらには障害者雇用の法定雇用率を満たすため、あらゆる企業で試行錯誤がなされていると思います。


そこで頭の片隅に入れておいてほしいのは、今の取り組みは、マジョリティ属性の社員(多くは男性社員)にとっても働きやすい職場へと繋がること、そういった意識が必要であることです。

公平性の観点で個別最適がどうしても必要な場面は出てくるでしょうが、まずこの「誰もが」という視点だと思っています。


この「誰もが」という視点こそが、私たちが目指すべきユニバーサルデザインの考え方です。DE&Iの取り組みは、「特定の誰か」を優遇するためのものではなく、むしろ「誰もが持っている潜在能力を最大限に引き出すための組織改革」と捉えるべきです。


子育てや介護の必要がない社員でも、フルフレックスや完全リモートワークといった柔軟な制度は、体調不良やプライベートな用事の際に恩恵をもたらします。また、オフィスの段差をなくすことは、車椅子の方だけでなく、ベビーカーを押す人、重い荷物を運ぶ人、怪我をしている人など、一時的に「マイノリティ」になりうるすべての人にとって快適になります。


真のDE&Iとは、性別、人種、障がいの有無といった属性に関係なく、「この組織なら自分らしく、最大限の力を発揮できる」とすべての社員が感じられる状態を創り出すことです。企業が多様な才能を惹きつけ、イノベーションを生み出し続けるためにも、「誰もが」を主語にしたユニバーサルな組織設計こそが、持続的な成長への鍵となるでしょう。 


参考情報


(著:玉村優佳)

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