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心理的安全性の本質と実践を徹底解説

更新日:3月5日



「心理的安全性」という言葉を耳にしない日はないほど、ビジネス界では一般的な概念になりました。しかし、その意味を正しく理解し、組織やチームに効果的に活用できている企業はどれほどあるでしょうか?


✅ 「心理的安全性」という言葉は知っているけれど、具体的に何をすればいいのかわからない。

✅ 「心理的安全性」を高めることは、チームを甘やかすことではないか?

もしあなたがそう感じているなら、この記事はきっとあなたの役に立つはずです。


 

【目次】

  1. 心理的安全性とは?

  2. 心理的安全性はチームワークの基盤

  3. 心理的安全性の「誤解」、も誤解かもしれない

  4. 心理的安全性を高めるための3ステップ

    • ①1on1 ミーティングの実施

    • ②失敗に対する寛容な態度の醸成

    • ③建設的なフィードバック

  5. さいごに

 

  1. 心理的安全性とは?


心理的安全性は、1965年にエドガー・H・シャインとウォーレン・G・ベニスによって初めて提唱されました。その後、1990年にウィリアム・K・カーンが学術論文の中で、個人が職場で「自らの考えや感情を素直に表現できる」状態として再定義し、再び注目がされるようになりました。

心理的安全性が、ビジネス界で広く着目されるようになったのは、エイミー・C・エドモンソンがチーム学習や組織行動論の観点から本格的に研究を始めた1999年、そしてその後出版された「恐れのない組織」の功績が大きいでしょう。その後、Googleが「心理的安全性はチーム業績へポジティブな効果がある」という自社内の研究論文を発表したことも大きく話題になりました。


エイミー・C・エドモンソンによると、心理的安全性は以下のように定義をしています。


「心理的安全性が高い職場環境では、チームメンバーは自らのアイデアや懸念を自由に表明し、失敗やミスから互いに学び合うことができる。そうした環境を整えることが、イノベーションや組織の成長を加速させるキーとなる。」


つまり、組織やチーム内で個々が「ここで発言しても大丈夫だ」「失敗を共有しても批判されず、学びに変えられる」と安心して感じられる状態を指しています。エドモンソンは、このような安心感があることで、メンバーは積極的に意見交換し、新しいアイデアを試し、学習サイクルを回していけると説いています。


  1. 心理的安全性はチームワークの基盤


先述したGoogle の調査によると、「良いチーム」には5つの要素がある、といわれており、その5つのもっとも重要な基盤に「心理的安全性」があるということを提唱しています。チームワークを科学するには5つの要素がピラミッドのように必要であることがわかっています。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクをとることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問したり、新しいアイディアを披露しても、誰も自分を馬鹿にしたり、非難したりしないと信じられる余地があるのです。






さらに「心理的安全性」の有無が、業績にもインパクトがあることがわかっています。

エドモンソンが1999年に行った調査で、51のチームを対象にしたフィールド調査を行いました。心理的安全性の高いチームほど、積極的に学習行動(失敗からの学び、アイデアの提案、問題点の共有など)を行い、結果としてパフォーマンスが向上することが示されています。


Google では、プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)という名の大規模な研究を行いました。プロジェクトアリストテレスでは先述のチームに基盤に最も重要な基盤が心理的安全性であることを突き止めただけでなく、「心理的安全性が高いチーム」は業績目標に平均して+17%以上の数値で達成していたことに対して、「心理的安全性の低いチーム」は平均して-19%で売り上げ目標に達しないことがわかりました。


心理的安全性はチームワークを盤石にする一歩ですが、そのメリットはそれだけではありません。


Uniposと九州大学が発表した「企業カルチャー白書2024」によると、『企業カルチャー白書2024』では、心理的安全性が以下の要素によって形成されるとしています。


  • 人と関係志向(承認・感謝・協力が文化として根付いている)

  • ステークホルダー志向(顧客や社会貢献を重視する姿勢)

  • 業績と競争志向(成長や挑戦を促す文化)


業績に貢献するだけではなく、チームワークが向上することによって、イノベーションや問題解決能力が高まることがわかっています。また、働く一人ひとりの内発的動機づけが高まることもあり、個人業績や、離職率も低下します。


心理的安全性の低いチームは、業績への影響だけではなく、離職率が高まります。実際に、短期的業績を強く追い求める企業においては、業績が高いが、定着意図が低くなり、離職率が高くなることが、先述の白書でわかっています。Uniposの調査によると、「職場満足度」と心理的安全性の高さに相関関係があることがわかっており、いかに心理的安全性を高めることが企業にとってメリットが大きいか理解いただけたかと思います。


  1. 心理的安全性の「誤解」、も誤解かもしれない


心理的安全性について、以下のような誤解をしている人もいるかもしれません。

  • 叱ってはいけない

  • 本音を言ってはいけない

  • ひたすら褒めなければならない

  • 本音を言い合える環境=激しい対立が起こる組織

これらの誤解は、心理的安全性を「ぬるま湯組織」や「対立ばかりの組織」と混同していることから生まれます。

実際には、心理的安全性が高い状態は、職場の特性をより顕著にするという側面があります。

例えば、個人主義的な文化の職場ではモチベーションが低下する傾向があるなど、心理的安全性は単なる「良い環境」を生むものではなく、職場の特性を強調するものであるという視点が重要なのです。

心理的安全性はバランスであり、現在の職場の特徴をきちんと捉えながら、理想の職場環境とのギャップを見極めて改善していくことが大切です。


心理的安全性が高まることで職場の良い部分も悪い部分も際立ってくる一方で、逆に心理的安全性が低いことが必ずしも悪いわけではありません。例えば、ある程度の緊張関係は、チームのパフォーマンス向上に寄与する場合もあります。このため、「心理的安全性があること」と「適度な緊張関係」のバランスを意識することが、持続的な成長につながります。

とはいえ、日本の職場では「心理的安全性」が低い職場が多いのではないでしょうか。


心理的安全性の有無は、役職の中で職位が上であればあるほど「心理的安全性が高い」と感じ、スタッフレベルに近づくほどに「心理的安全性が低い」と感じるものです。

もしこの記事を読んでくださっているあなたがリーダーの場合は、注意が必要です。自分は心理的安全性が高いと思っていても、チームメンバーは同様に思っているとは限りません。


心理的安全性があるのか、ないのか、知りたい方は、適切なアセスメントを受けることをおすすめします。Googleの10X Innovation Culture Programや、eNPS、Unipos といった企業が提供しているアセスメントをぜひご検討ください。


  1. 心理的安全性を高めるための3ステップ


さて、ここからは実践的なお話に移りましょう。心理的安全性を高めるために必要な4ステップについて解説します。


①1on1 ミーティングの実施

定期的な1on1 ミーティングを行うことで、心理的安全性を大幅に向上させることができます。研究によると、マネージャーが個々のチームメンバーと1on1 を行い、従業員のニーズや願望などに焦点を当てた会話を継続することで、6週間で心理的安全性が12%高まったということがわかっています。1on1では、業務進捗の確認だけでなく、メンバーの悩みやキャリアビジョンなど、個々の内面にフォーカスすることが重要です。


②失敗に対する寛容な態度の醸成

失敗を学びの機会として捉える姿勢をリーダーが示すことで、メンバーはリスクを恐れずにチャレンジできるようになります。実験や(合理的な)リスクテイクを罰しないことが重要です。あなたのチームや組織は減点のカルチャーになっていませんか?失敗をしたときに犯人探しをしていませんか?失敗を責めることや、犯人探しをすることで、失敗が許容されない組織文化を作り、やがて隠蔽体質へと変わっていきます。


Google では昔、検索システムが数時間に渡り止まってしまった大事件が起こりました。この時に失敗を招いた人を責めるのではなく、「リスクを探してくれてありがとう!」と全社員を対象とした表彰に選ばれたのです。ポストモーテムという文化が育まれている企業は、「失敗を繰り返さないために、どう仕組みを改善するか」を考えます。失敗は付きもの、失敗からどう学ぶか、という姿勢をリーダーが示すことで、「失敗に対する寛容なカルチャー」が醸成されます。


③建設的なフィードバック

お互いにフィードバックできる環境は、チームの成長に不可欠です。

フィードバックは「贈り物」という気持ちで、する側もされる側も感謝と尊重の気持ちを持ちましょう。また、大勢の前で叱責するのではなく、個別で、タイムリーに、かつポジティブなフィードバックとともに改善点を伝えることが大切です。


  1. さいごに


心理的安全性は非常に脆弱で、チーム全員が相互に高い信頼関係を持ち続けている、という高次元の状態です。心理的安全性はすぐに壊れやすく、努力を続けなければあっという間に壊れていきます。維持することが難しい分、心理的安全性の高いチームには数倍のメリットがあることでしょう。心理的安全性について、チームメンバーと話し合い、マネージャーは心理的安全性を明示的な優先事項であることを宣言しましょう。適切に心理的安全性を活用することで、より良い組織運営が実現に近づきます。


 

(著:宮本佳歩)




 
 

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