top of page

あなたの組織はどのフェーズ?DEI推進度を可視化する5段階評価モデル

更新日:9月4日


ree

「組織でダイバーシティを推進しよう」と思い立った時、一体どこから手をつけたらいいか、どこまで目指せば「DEI推進ができている」状態と言えるのか。暗中模索の方も多いのではないでしょうか。女性活躍推進・障害者の雇用と活躍・LGBTQ、ニューロダイバーシティ、グローバル企業であれば外国人のインクルージョンなど、多くの手をつけるべき課題が次々と見つかるはずです。


この記事を読んでくださっている方は、ダイバーシティ推進に関する知識やモチベーションが高い方が多いと思います。すでにご理解いただいているとおり、「多様な特性や属性の人が集まるダイバーシティのある組織」は手段でしかなく、「ダイバーシティのある組織で全ての従業員がインクルーシブであると感じていること」がダイバーシティ組織の真価を発揮する瞬間です。


▼関連リンク


DEIを推進していく上では、まずは組織の現在地を知り、その現在地に合わせた有効な打ち手・施策を行うことが非常に重要です。本記事では、オランダで20年以上DEIコンサルタントを務め、アムステルダム客員教授としてDEIに関する講義を受け持つWendy Broersen氏の著書『Not For HR』で解説されているDEIの5段階評価モデル(AIMモデル)についてご紹介いたします。


【目次】

  1. 「家づくり」に喩えたDEI推進

  2. インクルージョンの5つのステージ(AIMモデル)

    • フェーズ1 :土台づくり(Foundation)

    • フェーズ2:DEIに対する意識の萌芽(Awareness)

    • フェーズ3:理解が組織の隅々まで浸透していく(Understanding)

    • フェーズ4:DEIポリシーが組織に統合された状態(Integrated)

    • フェーズ5:インクルーシブカルチャーがDNAに(Sustainable)

  3. さいごに


  1. 「家づくり」に喩えたDEI推進


まず最初に押さえておきたいポイントとして、DE&Iを推進するときには「一つのテーマに絞り、一つずつ進行する」ことが望ましいという点です。「ダイバーシティのある組織を作りたい」と考えたとき、頭に浮かぶのは


  • 女性活躍推進

  • 障害者の雇用と活躍

  • LGBTQ

  • ニューロダイバーシティ

  • 外国人・人種を超えたインクルージョン


といった取り組みではないでしょうか。しかし、土台がしっかりしていない状態で複数の領域を同時に進めようとすると、コストの問題や経営層・従業員の理解が追いつかない、あるいは変化に伴う“痛み”に耐えきれない、などのリスクが高まります。


本書では、DEIのある組織作りを「家づくり」に喩えています。土台の段階ではまだ屋根を立てられないように、土台が十分に固まっていない段階でいきなり大きな施策を始めることは難しいものです。土台ができたら壁を作り、屋根をつけて、窓やドアの配置を決めて、色を塗って……と、順番に「家らしさ」を形作っていく。


そしてその家が完成したときに「自分には合わない」と出ていってしまう人もいます。しかし、それは決して悪いことではありません。インクルージョンは“one fits all”ではないからです。逆に、出ていった人を見て「この家は魅力的だ」と新たに入ってくる人もいます。そうして絶えず人が入れ替わりながらも、そこに残ったメンバーが住み心地を追求し、メンテナンスを続けていく──これこそがDEIの本質なのではないでしょうか。



  1. インクルージョンの5つのステージ(AIMモデル)


では実際、組織としてDEIに取り組むうえで、どのようなステップを踏むのでしょうか。Wendy Broersen氏は、DEIを推進していく過程を大きく「5つのフェーズ」に分けています。本書では「AIMモデル」として紹介されていますが、ここでは概要を簡単にご説明します。


ree

✅フェーズ1:土台づくり(Foundation)


最初のフェーズは、DEIを経営アジェンダにのせることから始まります。


このフェーズにいる組織では、経営チームのメンバーのうち1人がDEI推進に対して好意的に思っています。ボランティア的で自然発生的に、小規模なDEI活動が行われることが多いのも、このフェーズの特徴です。この時期は、まだDEIについて全社的に合意された戦略があるわけではありません。社会的にDEIに関連するトピックが浮上が浮上したときには、その場その場で問題解決的に対処するに留まります。


この段階で最も必要なのは、組織としての「戦略策定」と「予算の確保」です。 経営陣全員のコミットを得るためにも、まずはDEIを経営アジェンダに載せ、取り組む意義や目的をしっかりと共有していくことが重要です。


✅フェーズ2:DEIに対する意識の萌芽(Awareness)


気づきから初動へと進むのがフェーズ2です。


ここでは、経営陣が「DEIは組織にメリットがあり、いま動くべきだ」と認識を共有できている状態です。DEIに関するミッションとビジョンが策定され、予算面でも一定のサポートが得られるようになります。また、DEIに関わるデータ(男女の雇用比率、賃金格差、採用に関連する情報、退職率など)をトラッキングする仕組みが作られ始める一方で、まだ具体的な取り組みに対する数値目標などは設定されていないことがこのフェーズの特徴です。


このフェーズのポイントは、多様性を高めるための具体的なアクションに着手し始めることです。 インクルーシブカルチャーを促進する一連の施策や研修が始まり、経営層から「やろう」という声があがるため、社内の雰囲気も徐々に前向きに変わりはじめます。


✅フェーズ3:理解が組織の隅々まで浸透していく(Understanding)


DEI方針が現場レベルまで適用され、DEIに関する理念・目標の浸透を目指す段階です。

具体的なゴールやKPIが設定され、一定の多様性を確保するだけでなく、インクルーシブな環境をいかに実現するかが大きな課題になります。たとえば、人材育成のトレーニングプログラムにDEIトピックが組み込まれたり、人事関連の書類・ガイドラインなどにインクルージョンの要素が盛り込まれたりします。

リーダーシップポジションに就くには、インクルーシブ・リーダーシップが欠かせないという認識が社内で共有されるようになり、組織全体の風土として「多様性を当たり前に受け入れる」下地が整ってくるのがこのフェーズです。


✅フェーズ4:DEIポリシーが組織に統合された状態(Integrated)


DEIポリシーが根付き、“自然と多様性が集まる”組織を目指す段階です。


この段階に到達すると、多様性を「担保」すること自体はある程度クリアされ、施策の重心は「インクルージョンの維持・強化」に移ります。組織運営や意思決定にもインクルージョンさがあるか?が重視され、誰もが意思決定プロセスや日常業務でインクルーシブな行動を取るようになります。


また、経営層から現場メンバーに至るまで、誰もが「インクルーシブであること」を評価指標や行動規範のひとつと認識し、実践し始めるのもこのフェーズです。


✅フェーズ5:インクルーシブカルチャーがDNAに(Sustainable)


インクルーシブカルチャーが企業文化に完全に染みわたり、組織のDNAとなる段階です。


ここでは社内だけでなく、お客様や取引先に対しても、積極的にインクルーシブな文化を発信し、共有しようとする動きが本格化しています。たとえば、新入社員のオンボーディングプログラムにもDEIが組み込まれ、誰もがスムーズに馴染める仕組みが整っています。


さらに、社会全体のDEIに関する動きやトレンドを常に捉え、アップデートを続ける柔軟性を持っているのがこの最終フェーズの特徴です。環境変化を敏感にキャッチしながら、組織文化そのものを持続的に発展させる力が備わっています。



  1. さいごに


DEIを推進していくプロセスは、“家づくり”に似て、土台づくり → 意識づけ → 理解の深化 → 統合 → 持続という流れで少しずつ組織に根付かせ、DEIを組織の力に変えていくためには、インクルーシブな文化を醸成していくことが何よりも大切です。今自分たちの組織がどのフェーズにいるのかを客観的に把握し、その段階に合った施策を着実に積み重ねることで、本当に価値のあるダイバーシティ&インクルージョンが実現できます。


「全社員が、ここにいる自分を認められている」と感じられる環境を作るには、一朝一夕にはいきません。しかし、一人ひとりがこのプロセスを理解し、協力し合うことで、組織は必ず変わっていきます。ぜひ、今自分たちが取り組むべき具体的なアクションを考えながら、このAIMモデルを活用してみてください。


今こそ、自分たちの組織の「現在地」を可視化し、インクルージョンをさらに深めるための土台を築いていきましょう。



(著:宮本佳歩)



コメント


bottom of page