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なぜ今、男性にジェンダー平等が必要なのか|男性にこそ必要なジェンダー平等 #1

更新日:2025年9月16日


なぜ今、男性にもジェンダー平等が必要かを問うタイトル画像。

「ジェンダー平等」と聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?


「女性の活躍推進」 「女性管理職の増加」 「育休を取る女性の支援」


多くの方が、こんな風に「(女性による)女性のための取り組み」を思い浮かべるのではないでしょうか。


実際に、DE&Iの研修やウェビナーにいけば、参加者の9割が女性、という光景がほとんどです。実際に私もアムステルダム大学のDEIマスタープログラムに参加しましたが、その参加者13人のうち、12人が女性でした。「ダーバーシティ=女性のためのもの」という印象は日本だけの現象ではありません。


ですが、ちょっと待ってください。


もしジェンダー平等が本当に「女性だけの問題」なら、

なぜ日本の男性の自殺率は女性の2倍以上も高いのでしょうか。


なぜ男性の平均寿命は女性より6年も短いのでしょうか。


今日から始まるこのシリーズでは、「ジェンダー平等は男性にこそ必要」という、あまり語られてこなかった視点から、私たちの社会を見つめ直していきたいと思います。


【目次】

  • ある研究が明らかにした「見過ごされてきた真実」

  • 「それって女性の問題でしょ?」という誤解

  • あなたは、こんな経験ありませんか?

  •  数字が語る「男性の生きづらさ」

  •  「男性学」という新しい視点

  • ジェンダー平等は「ゼロサムゲーム」じゃない

  • 小さな違和感から始まる変化

  • あなたに問いかけたいこと

  • 次回予告


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📊ある研究が明らかにした「見過ごされてきた真実」


最近、ある興味深い研究論文を紹介していただきました。


MANdatory - why men need (and are needed for) gender equality progress」(Colette Van Laar, Anouk Van Rossum, Zuzanna Kosakowska-Berezecka, Renata Bongiorno, Karen Block)


日本語訳をすると「男性に必須 ― なぜ男性にジェンダー平等が必要で、ジェンダー平等に男性が必要なのか」というタイトルの論文です。


この研究が指摘しているのは、これまでのジェンダー平等の議論で見過ごされてきた重要な事実。


それは、男性もまた「男らしさ」という見えない檻の中で苦しんでいるということでした。



🤔 「それって女性の問題でしょ?」という誤解


私は日頃、ダイバーシティやジェンダー平等に向けた取り組みについて積極的に発信をしたり、論文を読んでいます。「ダイバーシティの仕事をしている」と周囲に話すと「これからは女性活躍の時代だからね」「もっと女性に活躍できる社会にならないとね」そんな言葉をかけられることが多いのです。この言葉の裏には「ダイバーシティ=女性のためのもの」と感じているのでは?と考えさせられます。


実際、ジェンダー平等に関する企業の取り組みや国の施策に関するニュースを見ると、こんなコメントがつくことをよく目にします。また企業に務めるビジネスパーソンからも、女性の管理職増加や男女の賃金格差解消に向けた取り組みを実施すると、こんな不満が漏れ聞こえてきます。


  • 「女性を優遇する逆差別じゃないか」

  • 「男性の居場所が奪われる」

  • 「自分には関係ない話」


本当にそうでしょうか?



💭 あなたは、こんな経験ありませんか?


ちょっと立ち止まって、考えてみてほしいです。仕事やプライベートな場面でこんな悩みや経験をしたことはありませんか?


仕事で感じる「プレッシャー」

  • 「残業は当たり前」というプレッシャー

  • 男性は飲み会に誘われたら断ってはいけない

  • 弱音を吐けない職場の雰囲気

  • 育休を取りたいけど言い出せない


プライベートでかけられる数々の「何気ない言葉」

  • 子供の頃に言われた「男は泣くな」

  • 悩みを相談できる相手がいない孤独感

  • 「稼がなきゃ」という重圧


健康面をついつい後回しにしてしまうこと

  • 体調が悪くても「大丈夫」と言ってしまう

  • メンタルの不調を隠してしまう、言い出せない

  • 病院に行くのを後回しにする。仕事優先。


これらは全て、現代まで続く「男らしさの呪縛」が生み出している問題なんです。


📈 数字が語る「男性の生きづらさ」


感覚的な話だけではありません。データを見てみましょう。


日本における現実:

  • 男性の自殺者数は女性の2.1倍(2021年)

  • 過労死の被害者の96%が男性

  • 男性の平均寿命は女性より約6年短い

  • 男性の育休取得率は30%(女性の育休取得率は80%超え)


これらの数字は、「男性優位の社会」と言われる日本で、実は男性もまた大きな犠牲を払っていることを示しています。



🔬 「男性学」という新しい視点


実は、こうした「男性の生きづらさ」や「男らしさの呪縛」について真剣に研究する学問分野があることをご存知でしょうか。それが「男性学」です。


男性学とは、「男性が男性であるがゆえに抱える問題」を研究する学問。1970年代のアメリカで生まれ、日本でも1990年代から本格的に研究が始まりました。


日本の男性学研究の第一人者である武蔵大学の田中俊之准教授は、こう語っています。


「男性は『強くあれ』『弱音を吐くな』という規範に縛られ、誰にも相談できずに一人で問題を抱え込んでしまう。これが男性の自殺率の高さや、健康問題につながっている」


男性学が明らかにしてきたのはこうしたことです。


  • 「男らしさ」の規範が男性自身を苦しめている構造

  • 男性が感情表現を抑圧することの心理的・身体的影響

  • 仕事中心の生き方がもたらす家族関係への影響

  • 男性同士の競争的な関係性がもたらす孤独


つまり、男性学は「男性もジェンダー規範の被害者である」という視点から、誰もが生きやすい社会を模索する学問なのです。


女性学がフェミニズム運動と共に発展してきたように、男性学もまた、ジェンダー平等を「女性だけの問題」から「すべての人の問題」へと広げる重要な役割を果たしています。


また興味深いレポートがあります。電通総研が日本の男性3000人を対象に実施した「伝統的な男性らしさ」を信じる男性とそうでない男性にどのような特徴があり、実際にどのように行動の違いがでるのか調査したレポートがあります。



本調査では、男らしさの箱の中に囚われた「マン・ボックスの中にいる男性」(IN)と、男らしさの箱から出てジェンダー平等的な考え方をもつ「マン・ボックスの外にいる」男性(OUT)で、意識や行動にどのような違いがあるかについて分析すると共に、回答者の年代(18~30歳、31~50歳、51~70歳)による意識や行動の差も比較したものです。


興味深いことに、若年男性ほど「女性活躍を推進する施策を支持せず」、「フェミニストが嫌いである」と答えています。


「女性活躍を推進する施策を支持するか」について年代別に比較した調査グラフ

ここの「マン・ボックスの中にいる男性」、つまり若年男性で男らしさ規範への共感が高いほど、いじめや暴力の被害者にも加害者になっている方が多いのです。いわば暴力的な行動に巻き込まれたり、自分自身でも加害者に回ってしまうという衝撃的な事実がわかっています。この現象を描いたNetflix の大人気ドラマ「Adolesence」もぜひチェックしてください。


男らしさ規範との関連で、他者からされたこと・自らしたことの割合を比較


🔄 ジェンダー平等は「ゼロサムゲーム」じゃない


こうしたジェンダー平等への取り組みに不安を感じる男性の根底には、「女性が得をすれば、男性が損をする」というゼロサムゲーム的な思考があります。


実際に一部の男性は、特に職場における女性の進歩を「男性の力への脅威」とみなすことが分かっています。(Fiske and Taylor, 2013)これはいわゆる「ゼロサムゲーム」(1か100かとして考える概念)と呼ばれますが、


男性が女性よりもこの「ゼロサムゲーム」への信念が強く、一般的にジェンダー関係をより脅威的で競争的なレンズを通して見ていることもわかっています。(Bosson et al., 2012; Wilkins et al., 2015; Kuchynka et al., 2018)


こうしたゼロサム的思考を少しでも軽減させることにより、こんな社会に変われるのではないでしょうか。例えば、


  • 女性が活躍する社会は、男性も「稼ぎ手」の重圧から解放される社会

  • 男性が育児に参加できる社会は、女性もキャリアを諦めなくていい社会

  • 誰もが弱音を吐ける社会は、みんなが生きやすい社会


つまり、ジェンダー平等は全員が得をする「プラスサムゲーム」なんです。



🌱 小さな違和感から始まる変化


「でも、今さら変われないよ」

そう思う方もいるかもしれません。


大丈夫です。大きな変革なんて必要ありません。 まずは、小さな違和感に気づくことから始めましょう。


  • 「男だから」という理由で我慢していることはないか

  • 本当はやりたいのに「男らしくない」と諦めていることはないか

  • 誰かに相談したいのに、できずにいることはないか



💬 あなたに問いかけたいこと


このシリーズを通じて、私たちは一緒に考えていきたいと思います。


「あなたは『男らしさ』に縛られていませんか?」


もしかしたら、その縛りは思っているより強いかもしれません。 

気づくことが変化の第一歩です。



📝 次回予告


次回は、「男らしさの呪縛が奪うもの」と題して、より具体的に「男らしさ」がもたらす健康被害や社会的損失について掘り下げていきます。


  • なぜ男性は病院に行きたがらないのか

  • 「仕事人間」の末路

  • 感情を押し殺すことの代償


ぜひ、あなたの経験や思いをコメント欄で教えてください。


一緒に、誰もが「自分らしく」生きられる社会を考えていきましょう。


🔖 このシリーズについて


「男性にこそ必要なジェンダー平等」は、全5回のシリーズ記事です。最新の研究結果をもとに、男性の視点からジェンダー平等を考え直していきます。


  1. なぜ今、男性にジェンダー平等が必要なのか(本記事)

  2. 「男らしさの呪縛」が男性から奪うもの

  3. なぜ男性はジェンダー平等に抵抗感を持つのか

  4. 家庭とケアから見える新しい男性像

  5. すべての人のためのジェンダー平等へ


📚 参考文献

  • Meeussen, L., Van Laar, C., & Van Grootel, S. (2020). MANdatory - why men need (and are needed for) gender equality progress.

  • 田中俊之『男性学の新展開』青弓社、2009年

  • 日本財団ジャーナル「ジェンダー平等は女性だけの問題ではない。男性が抱える生きづらさとは」https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2024/100417/gender


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