日本企業ではまだあまり知られていない、ERG(従業員リソースグループ)がDEI推進において重要というお話
- kahomiyamoto6
- 2月20日
- 読了時間: 7分
更新日:9月4日

ERG(従業員リソース)ということばを聞いたことはありますか?
日本では外資系IT企業を中心に広まっているようですが、まだまだ日本企業の中では認知度が高いとはいえません。実際、筆者がGoogle にいたころはERGはとても活発に活動をしていましたし、他社のERGグループとの交流もありました。が社をでると「ERGってなに?きいたことないよ」という声の方が圧倒的に多い印象です。
日本の企業の中でも、「社内コミュニティ」や「社内サークル」のような同じような役割を持っている企業も多いと思います。実はERGの存在が、DEIを推進するかもしれない...そんな研究も発表されています。本記事では、ERGの役割やDEI推進との関連について解説します!
【目次】
ERG(従業員リソースグループ)とは
ERGとDEI推進の効能を示すさまざまな研究
私たちの組織にERGがない。どうしたらいい?
①推進者と仲間を見つける
②組織のニーズを分析する
③メンバーを募集し、小規模からスタートする
④定期系な活動を計画する
⑤マネジメントのバックアップを得る
まとめ

ERG(従業員リソースグループ)とは
ERGとは、Employee Resource Group の略です。日本語の「従業員リソースグループ」そのままですね。日本語の訳ではあまりピンとこないかもしれません。
ERGとは、組織ないで共通の特性や関心事を持つ従業員が自発的に形成するグループのことを指します。例えば、グローバルカンパニーだったGoogleでは「女性」や「Asians」「Latino」「LGBTQ+」「ゲイ」「Black」などとさまざまなERGが存在していました。
ERGと呼べるような特徴は以下の通りです:
自発的に形成される:会社主導ではなく、従業員が主体となって自主的に設立・運営されます。
共通の属性がある:メンバーは、人種、ジェンダー、性的指向、障害、宗教など、なんらかの共通する特性や属性を持っています。共通の趣味ではありません。
明確な目的がある:DEIの推進や、特定グループの支援を目的としています。
アライが参加できる:当事者だけではなく、支援者(アライ)もグループの一員となることができます。
この特徴をみていただくと、「部活」や「社内サークル」「社内コミュニティ」との違いが見えてきませんか?共通の趣味や、特定のスキルの獲得(e.g. クラウドの学習など)ではなく、性別や性的指向など、特性ベースで支援が必要なマイノリティグループが中心となり結成されます。
ERGの起源は1960年代のアメリカに遡るといわれています。人種間の緊張が高まる中、ゼロックス社のCEOが黒人社員にERGの設立を促したことがきっかけで発足したのが、世界的なERGの始まりです。
ERGとは、従業員が変えることができないアイデンティティに自信を持ち、組織内で意味のある影響を与える場を提供する重要な場を果たしています。
また、メンバー間のネットワーク構築や支援、従業員のエンゲージメントの向上、キャリア開発などさまざまな役割をはたすものです。
ERGとDEI推進の効能を示すさまざまな研究
ERGがDEI推進において重要な役割を果たしていることが複数の研究結果からわかっています。
McKinseyの研究*によると、効果的なERGは従業員のインクルージョン感を高めることが明らかになっています。ERGを効果的・もしくは非常に効果的に捉えている従業員は、非効果的と評価している中要因に比べて、より職場への帰属意識や、包摂的な感覚を持つ可能性が高いと示唆しています。
この研究でいうERGの効果は以下の5点で測定されています。
外部エンゲージメント
アライシップ
リーダーシップとの接点
従業員コミュニティの構築
キャリア向上
この次元のうち、一つでERGを効果的と評価した従業員は、そうでない従業員と比較してポジティブなインクルージョンスコアを報告する可能性が高いと発表しています。その数値は83%対59% と大きく開きがあることがわかっています。日本の職場では、熱意を持って仕事に取り組んでいると感じている従業員が先進国の中でもとりわけ低く、エンゲージメントスコアが低い傾向にあります。エンゲージメントを上げる施策の一つとしてERGは非常に効果的であることがわかります。
また調査会社のGallupによると、インクルーシブなカルチャーがある会社は、収益が21%高いことがわかっています。*
ERGは多様な視点を活かすことで、製品開発や市場戦略にも貢献することができます。
Harvard Business Reviewの調査によると、活発なERGを持つ企業は新市場の開拓に成功する可能性が70%高いとされています。
その他にもERGに積極的に参加しているメンバーの方が離職率が低いことが発表された研究もあります。
ERGは、インクルーシブな文化の醸成、離職防止、キャリア開発などさまざまな利点があります。
私たちの組織にERGがない。どうしたらいい?
ERGの重要性は理解したけれど。ERGがない場合、自然に立ち上がるものではありません。
まったくゼロの状態からERGを立ち上げるときに押さえておきたいステップをご紹介します。少しずつ進めていくことを意識しましょう。仲間探しが必要です。立ち上げは社内コミュニティを作るステップにとても似ています。社内コミュニティの作り方をもっと詳しく知りたい方は、拙書『成功するコミュニティの作り方』(リックテレコム社)も合わせてご覧ください。
①推進者と仲間を見つける
ERGの重要性を理解し、情熱のある推進者の存在が最も重要です。また一人で推進するのは負担が大きいため、、まずは信頼できる仲間を探す必要があります。複数人でもいいのですが、まずは2人を中心にして探すのが関係者が増えすぎた意思決定プロセスが複雑にならず、調整コストもかからないのでおすすめです。
②組織のニーズを分析する
これは、立ち上げ者が感じているバーニングニーズに基づくのが一番です。マイノリティとなっていると感じている女性や、LGBTQ、人種に関わるような特性など...組織によって課題は違うはずです。最もネットワーキングが必要だと思われるグループから着手するのがいいでしょう。
※ERGに限らず、ダイバーシティ推進をする上では、複数のテーマを同時進行しないことが重要です。一気に進めるのは難しく、フォーカスがブレてしまうため注意が必要です。
③メンバーを募集し、小規模からスタートする
いきなり大規模に始めるのではなく、まずは少人数で始めるのがおススメです。小さな活動だと、計画の見直しや手直しも柔軟にできますし、成功体験を積みやすいのもメリット。実績が出てきたら少しずつ参加者を増やしていくと良いでしょう。
実際にメンバーを集めていく段階になった際には、社内報やSNS、社内イベントなどを使って「こんな想いでERGを始めます」というメッセージを発信してみてください。ストーリーが大切です。「どんな人が参加しているのか」「どんな雰囲気で話し合っているのか」など、具体的な様子を共有すると参加へのハードルが下がります。
④定期的な活動を計画する
「参加メンバーがいつでも意見を言いやすい場」を定期的に作ることもポイントです。定例ミーティングや情報セッション、勉強会など、かたちは何でもOK。みんなでアジェンダを作り、ミッションとゴールをしっかり共有することで、活動に一体感が生まれます。心理的安全性の作り方の記事もソルビス内にありますのでそちらもご参照ください。
⑤マネジメントのバックアップを得る
マネジメントの理解とバックアップを得ることは、ERGが社内で存続する上では必要に重要です。理想は、活動予算を得られることですが、いきなり予算獲得を目指すと存続自体が火がつかぬうちに小さくなってしまうでしょう。活動した内容やメンバーからのフィードバック、定量的・定性的な成果は伝えられるように日頃から準備をしておきましょう。エンゲージメント指数はいきなり上がることはないですし、数値として現れてくるのは時間がかかります。どんな活動をしたか、メンバーの声、実際に仕事に役立ったことなどがあれば、そういったエピソードも積極的に収集しましょう。
まとめ
ERGは、DEI推進だけでなく、企業の成長や従業員のエンゲージメント向上にも貢献する重要な組織です。まだERGがない企業でも、小規模から始めることで着実に成果を上げることができます。まずは社内の仲間を見つけ、小さくスタートすることからはじめてみましょう!
引用:
(著:宮本佳歩)



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